駒の使い方


心得

『中将棋の指し方』には中将棋の心得として次のように記されています。

  1. 獅子を陣頭に出す。
  2. 敵獅子を付けられないようにする。
  3. 駒に足をつける。
  4. 大走りを下段におく。
  5. 子駒を繰り出すこと。

1.2.3.は読んで字のごとしです。
4.の「大走り」というのは、走り駒(角や飛車のように何目でも進める駒)の中でも特に強力な「奔王・飛鷲・角鷹」のことを指します。
そして5. これが一番重要です。
中将棋は駒を取り捨てにする将棋ですので、一度失った戦力は補完できません。従って前線にはできるだけ弱い駒を送り込み、その駒を使ってできるだけ敵方の強い駒と差し違えることが大切です。

これらの心得をふまえた上で、各駒の扱い方についてもう少し詳しく解説してまいります。


各駒の扱い方

  1. 〜 中将棋でもやっぱり便利屋 〜
    現代将棋同様、攻めの突破口として使ったり、盾にしたり、相手にちょっかいを出すのに使います。
    現代将棋では「歩のない将棋は負ける」などと申しますが、駒の再利用ルールがない中将棋において歩の有無はさほど大勢に影響を及ぼしません。どんどん相手の駒と差し違えましょう。

  2. 仲人 〜 前にも後ろにも進める歩 〜
    序盤の小競り合いに巻き込まれて早々に盤面から消えることが多いため、あまり使いでのない駒です。
    成ると「醉象」になりますが、これまたあまり使いでのない駒です。

  3. 獅子 〜 最初は元気 〜
    接近戦に強く、序盤では無類の強さを誇ります。
    しかし中盤以降、主立った小駒が盤面から消え戦局の主役が走り駒に移ってくると、最大でも二目しか進めぬ獅子は活躍の場がないどころか、敵の走り駒の利き筋から這々の体で逃げ回るばかりになってきます。
    そうなった場合は無理に延命させようとせず、できるだけ相手の強い駒と差し違えてしまうのが良いでしょう。

  4. 奔王 〜 たとえるなら大陸間弾道ミサイル 〜
    八方好きなだけ進めるという強力な性能に加えて獅子の隣に初期配置されていることからついつい序盤から使ってみたくなりがちですが、敵味方の駒がひしめき合っている序盤の段階で前線に出すのはきわめて危険です。
    盤上から駒がはけて周囲の見通しが良くなる中盤以降までは、自陣に下げておきましょう。

  5. 龍王 〜 はじめからいます 〜
  6. 飛鷲 〜 鋭利な爪で斜め前の獲物を居食いする 〜
    「龍王」はどちらかといえば「攻め」よりの駒です。ただ龍王はむしろ成って「飛鷲」となった時に真価を発揮します。
    序盤は小駒の後方支援に徹し、隙あらば敵陣へ突入して成るよう心がけましょう。

  7. 龍馬 〜 中将棋でも「馬は自陣に」 〜
  8. 角鷹 〜 前に回るとつつかれます 〜
    「龍馬」は守りの駒です。特に指しはじめの数十手においては、この駒で獅子の足をつけるのがもっとも効率的です。
    成って「角鷹」となった暁には、真ん前に進むことのできぬ「盲虎」や「麒麟」などにこっそり忍び寄って、居食いを狙いましょう。

  9. 飛車 〜 中将棋では雑魚駒 〜
    現代将棋では最強の駒ですが、中将棋では大したことありません。
    突破口を開くための足がかりとして捨て駒にするのも手でしょう。

  10. 竪行 〜 辺境警備隊 〜
  11. 飛牛 〜 隅から見張ってます 〜
    動き方も地味、初期配置も端の方と来れば、雑魚駒と思われても仕方のない竪行。しかしなかなかどうして、これで意外と使いどころの多い駒なのです。
    一筋外へずれて反車・香車ともども端攻めをするも良し、上段の歩の足となって龍馬が2五や11五に出てくるのを牽制するも良しと、いわば辺境警備隊とでもいうべき存在です。
    この駒は横行・猛豹・飛車・角行などの通り道をふさぐように配置されているため不用意に動かしてしまいがちですが、駒そのものの性能は大したことありませんので、あまり前に出過ぎると獅子や龍王の餌食になってしまいます。
    成って「飛牛」となったら、自陣・もしくは敵陣の奥深くに配置し、盤中央に睨みを利かせるようにしましょう。

  12. 横行 〜 ご用のないもの通しゃせぬ 〜
  13. 奔猪 〜 前に進めぬ猪とはこれいかに 〜
    「横行」は完全に守りの駒です。横にはめっぽう強いという特性を生かして、成りを目指して突入してくる敵の小駒を蹴散らしましょう。
    ただし初期配置位置にほうっておくと、一歩も動けぬわ、端歩を突かれるとたちまち反車の餌食になるわとろくなことになりません。早い段階で九段目にあがって盤中央へと移動しておきましょう。
    横行はその特性から成る機会は少ないのですが、もし敵陣に入ることができたら躊躇せず「奔猪」に成って、敵の玉が浮き上がってくるのを牽制しつつ、盤中央へも睨みを利かせるように配置しましょう。

  14. 麒麟 〜 大股に歩きます 〜
    動き方に癖があるので一見あまり使い道がないようにも思えますが、実際に使ってみるとなかなかどうして……などということもなく、想像通り使いづらい駒です。
    成れば「獅子」ですので、隙を見て成りを目指しましょう。

  15. 鳳凰 〜 意外な伏兵 〜
    麒麟同様動き方に癖がありますが、上下左右に一歩ずつ動ける分、麒麟よりは扱いやすい駒です。
    桂馬のない中将棋において、最初から彼我の駒を飛び越せる駒は獅子と麒麟と鳳凰だけですので、大切に扱いましょう。

  16. 盲虎 〜 千鳥足の虎 〜
  17. 飛鹿 〜 死角のない竪行 〜
    七方向に進めるとはいえ、前に進めぬというのは意外に不便です。
    盲虎を玉の上段に配すると、獅子や麒麟にくっつかれてあえなく玉が頓死、などということになりかねませんので、できるだけ避けましょう。
    成ると「飛鹿」 竪行に毛が生えた程度の性能の駒ですが、竪行と違って死角がないのが強みです。

  18. 角行 〜 獅子のつなぎ駒 〜
    駒の初期配置図をご覧いただければわかりますが、序盤、盤の中央付近に歩み出た獅子の足をつけるのに、龍馬やこの角行がうってつけなのです。
    従って序盤は初期位置から動かさず、獅子の足となることに徹した方が良いでしょう。

  19. 反車 〜 前にも後ろにも進める香車 〜
  20. 鯨鯢 〜 敵陣を後ろから襲う 〜
    「反車」はそのままですと単に「前にも後ろにも進める香車」程度の駒に過ぎませんが、成って「鯨鯢」になりますと事情は一変、「敵陣内から盤中央を睨む」という、敵にとってやっかいな駒になります。
    隙あらば成って、プレッシャーを掛けましょう。

  21. 王将/玉将・太子 〜 国に二人の王あることもあり 〜
    もし醉象が太子に成れたら、玉は小駒として使うこともできます。

  22. 醉象 〜 背後に回ってくれるな 〜
    基本的には玉の側に置いておいて、守りに使う駒です。
    中盤以降、盤面上が駒枯れになってきたら成りを狙うのも手ですが、リスクは高く、難しいでしょう。

  23. 金将 〜 近衛兵 〜
    現代将棋同様、玉の近衛として使いましょう。

  24. 銀将 〜 切り込み隊長 〜
    これも現代将棋同様、前に出して攻めに使いましょう。前に進むときは千鳥足で、というのも現代将棋と同じです。

  25. 銅将 〜 前線部隊兵 〜
    この駒も前線で使う駒です。ただし「銅将」は退却が苦手ですので、不用意にふらふら前に出ぬようにしましょう。
    特に龍王と飛車には要注意です。

  26. 猛豹 〜 前線の司令官 〜
    端にあるのでついつい見落としがちですが、「猛豹」は銀を上回る性能を持った駒です。
    竪行に経路をふさがれて前に出にくいのが難点ですが、終盤ふと気づけば自陣に猛豹がまだ残っていた、なんてことにだけはならぬようにしましょう。横に動けぬ駒を自陣に残しておいても守りには使えません。

  27. 香車 〜 前を横切る者は斬る 〜
  28. 白駒 〜 自陣の底から盤中央を睨む 〜
    「香車」は現代将棋同様、盤の隅っこに配置されていることもあって、局面が端の攻防にでもならぬかぎりあまり出番はありません。
    成ると「白駒」 この駒は鯨鯢と逆で、自陣の底に配置することで威力を発揮します。

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